医療機関名 | 美濃市立美濃病院 |
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所在地 | 岐阜県美濃市中央4丁目3 |
従業員数 | 約200名 |
病床数 | 一般122床 |
開設 | 1953年2月 |
診療科目 | 内科・消化器内科・外科・整形外科・眼科・小児科・泌尿器科・皮膚科・産婦人科・耳鼻いんこう科・脳神経外科・放射線科・リハビリテーション科・麻酔科 |
岐阜県の中濃地域に位置し、美濃市が運営する美濃市立美濃病院。
医師数は常勤10名、診療科数は11科と⼩規模でありながら、地域の医療機関と連携しながら、コンパクトで機能的な医療を⾏っている病院です。高齢化が進む地域ニーズに対応し、地域の人たちが長く健康で暮らすための医療を充実させているのが特徴です。
県内の岐阜・東濃・西濃・飛騨の4つのエリアからのアクセスが良く地域医療の中核的な役割を担いながらも、人口減少の影響を受け、スタッフの安定的確保、離職率の改善、患者満足の向上といった課題がありました。
当社にご相談いただいた課題は大きく以下の3点です。
医療機関の評判は口コミで広がりやすく、地域から評価されるようになることは病院経営上、重要な課題になります。
それは、集患や増患に影響を及ぼすだけでなく、医療スタッフの確保にも大きく影響します。
これらの課題を踏まえ、院長、看護局長、事務局長など経営幹部と協議の上、「美濃病院の価値向上」に向けたプロジェクトを2018年6月に発足させました。
スタッフのモチベーションを向上させる施策として、研修などで士気を高める方法が考えられます。
医療という業種の特殊性を考えた場合、医療スタッフとしての士気を高めたとしても、その病院やその医療機関で働くことへの誇りを高める施策でないと、離職率の改善は望めません。
そこで、まず「美濃市立美濃病院」の独自性と地域に提供する価値を明確にし、その価値を全スタッフが共有することから始めました。提供価値を業務のモチベーションに直結させ、高いモチベーションで日々の業務に当たることで、患者満足が高まる流れをイメージしました。
美濃病院のスタッフ15名が、プロジェクトメンバーとして毎月ミーティングを開催。
病院の独自性や、病院らしさをスタッフ自らが明らかにしていきました。
その独自性をベースに「地域でどのように喜ばれる医療機関になるべきか」を議論しました。
計8回のミーティングを通し抽出されたキーワードから「美濃市立美濃病院の約束」を制定。さらに、その独自価値のシンボルとして新しいロゴマークを作成しました。
プロジェクトメンバーが講師となり、少人数のグループ学習会を開催。
200名近いスタッフ全員と病院の独自価値やビジョンを共有する取組みをプロジェクトメンバーが中心に推進します。
それは、「美濃病院の約束」を単に説明するだけでなく、その実現に必要な施策、院内に存在する課題などを5~6人で討議するグループ学習会です。
そのプロセスを通じて、各自が病院の独自価値を再確認し、病院のビジョンを自分ゴトとして捉えていきます。
プロジェクトメンバーによるミーティング、グループ学習会による討議から、院内の様々な課題が浮かび上がります。
課題解決が、患者満足の向上、従業員モチベーションの向上を促します。
その取組みもトップダウンではなく、スタッフの主体的な運営が可能になるのは、このプロジェクトがスタート時からスタッフ主導で進められたからです。
・患者さん向け名刺
患者さんに安心して通院・入院していただくために、美濃病院では今後担当する医師や看護師などのスタッフが患者さんに渡せるように名刺を用意します。そこには、担当スタッフの名前や役割だけでなく、スタッフとして心掛けていることが記されています。
・スタッフ着/ネームプレート
「美濃市立美濃病院の約束」に、スタッフは「患者様とご家族にとっての安心のシンボル」と記されています。安心のシンボルとしてのスタッフが身に着ける白衣などのスタッフ着やネームプレートも、それに相応しいものに今後変更されます。
これまで院内の改善策のほとんどが、院長発信によるものでした。その結果、経営の安定化を実現できたのは素晴らしい結果と言えます。
今後の医療現場の働き方改革など、医療機関に科せられた様々な課題をクリアさせていくときには、これまでのやり方では立ちゆかなくなってきているのも事実です。
美濃市立美濃病院は、改善施策の主体がトップから現場に移ってきています。それは、現場スタッフの主体性が高まってきた結果と言えます。
阪本院長を中心に進めている美濃病院の改革は、すぐに数字的なものとして表れるものではないかも知れません。
しかしながら、今後の医療経営、医療現場のあり方、医療スタッフの働き方に示唆を与えるものになると思われます。