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「医療はサービス業である」と言われる方がいらっしゃいます。果たして、本当にそうでしょうか?
私は職業柄、「医療はサービス業でしょうか?」と質問をうけることが多々あります。
ここでは改めて、医療とは何か、医療機関とはいかなる存在かを考えてみたいと思います。
Wikipediaによると、「サービス」とは「経済用語において、売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のことである。第三次産業が取り扱う商品である」と記されています。
また、特徴として以下の5点が挙げられています。
同時性:売り買いした後にモノが残らず、生産と同時に消費されていく。
不可分性:生産と消費を切り離すことは不可能である。
不均質性/変動性:品質は一定ではない。
無形性/非有形性:触ることができない、はっきりとした形がないため、商品を購入前に見たり試したりすることが不可能。
消滅性:形のないものゆえ、在庫にすることが不可能である。
そして、「サービス業」とは、「サービスを取り扱う産業のことである」と定義づけされています。
これらの記載を読んでみると、医療とはサービス業と考えることができます。
しかしながら、そう言い切ってしまうと少し違和感を覚えます。
それはなぜでしょう?
「医療機関はサービス業かどうか」を考える際に、二つの視点で検討する必要があるように思われます。
一つは、医療者としての視点です。
そして、もう一つは患者としての視点です。
「医療機関はサービス業か」を考えるにあたっては、これら二つの視点で検討しないと違和感を払拭できません。
医療を提供する医療者からすると、
「医療は人の命を扱う専門性の高い、尊い職業である。誰にでもできることではない。
勤務医の勤務時間は一日平均12時間を越える場合があり、残業もあれば当直もある。夜間の呼び出しもある。
それらに対応できるのは、責任感と使命感があるからだ。
医療をいわゆるサービス業と一緒されるのちょっと困る」ということになるでしょう。
一方の患者視点で医療を考えるとこうなります。
「私たちは、自身に降りかかった疾患で困っている。
疾患で困っている人を助けることを「業」としているのが医療機関であり、医療機関で提供される満足感を期待して、治療費を支払っている。
だから、医療はサービス業だ」
同じ「医療」に対する見方でも、提供する側と、提供される側とで大きな違いがあります。
それ故に、「医療機関はサービス業である」とする考え方に、違和感を覚える人がいるのだろうと思います。
ではここで、医療が一般的なサービス業とどのような違いがあるのかを見ていきたいと思います。
一般的にサービス業というと、百貨店、スーパーマーケット、コンビニ、レストラン、ホテル、エステ、テーマパークといったものが思い当たります。
これらは有形・無形のサービスを提供し、顧客に喜んでもらってその代価を受け取るわけです。
例えば、レストランで食事をした場合、食べた物、飲んだ物に対してお金を支払います。
レシートには、通常「サービス料○○円」と記載されます。
サービス料の記載がない場合には、飲食料にサービス料が含まれていると考えられます。
ホール担当者が料理を運んでくれたり、ワインの栓を抜いてくれたりという無形のものに対しても代価を支払っているわけです。
サービスはタダではないのです。そして最終的には営利を目的とします。
経費を上回る収益をあげることが求められます。
これが、一般的なサービス業になります。
医療に関してはどうでしょうか。
患者さんが医療機関を受診すると、診察を受け、必要なら検査を受け、薬を処方してもらいます。
場合によっては、検査も薬もなし、ということもあります。
そこで支払われる料金は、問診・聴打診・触診といった医師の技術に対する代価や、検査料、薬代に対する代価です。
医師が親切だった、看護師が優しく笑顔がステキだったなどのことに、代価を求めることはありません。
医療と一般的なサービス業との違いは営利を目的としないということです。
もちろん医療機関は赤字でもいいというわけではありません。
しかし企業のように儲ける必要はないのが医療機関です。
設備投資などにお金がかかりますから、その分の収益はあげなければなりませんが。
患者視点で言うところの「困っている人を助けることを「業」として」いながら、営利を目的としていない点が一般的なサービス業との根本的な違いです。
「医療機関はサービス業か」を考えるうえで、医療者視点と患者視点の両面から検討する必要があると申し上げました。
正しい概念はともかく、料金を支払う患者さまはサービスを求めているということは理解しておく必要があると思います。
ここでいうサービスとは、医療の技術もさることながら、親切とかていねいとか、優しい笑顔といった情緒的なサービス領域です。
情報化社会で、医療機関は選ばれる時代に入ってきました。
選ばれる医療機関でなければ生き残れない病院も現れてきます。
そこには、地域での評判が大きく影響します。
良い評判は多くの場合、医師の技術や病院の設備というものではなく、患者さまや家族に寄り添った親切な対応や、話に耳を傾けてくれる姿勢などによって形成されます。
そうした目に見えない「サービス」が、「あの病院はとても親切でていねい」といった評判を生み、地域での評価に繋がります。
医療機関のあり方を考えるうえで、患者視点での医療サービスに目を向ける必要があります。
当社では、医療スタッフ向けのマネジメント研修や病院の地域価値を高める各種のサポートを行っています。
まずはお気軽にお問い合わせください。