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「サービス」と聞くと、心地よい体験や付加価値といった印象を受けます。
サービスという言葉は、有形で提供される「もの」を商品と表現するのに対し、無形で提供される「こと」に使われます。
無形で提供されるという点では、医療もサービスの一つと言えます。
前回のブログ「医療機関にいま求められる病院ブランディングとは」で、「患者さんが医療機関を選択する際、安全・安心とともに、『質の高さ』をより重視する傾向が高まった」と記しました。
医療機関にいま求められる病院ブランディングとは
一般的な医療コンサルの支援内容と病院ブランディングの違い
かかりつけ医に選ばれるための2つの病院ブランディング
今回は、そもそも「医療機関に求められる質とは何か」ということから、いま医療機関に求められる「質の向上」とはどういうものかについて、私なりの考えを書かせていただきます。
患者さんが医療機関に求める質は「機能品質」と「知覚品質」の2つです。
医療をサービスと考えると、「提供される2つのサービス品質」と言うことです。
1.機能品質とは
医療設備や医療技術、検査精度など、その病院が医療機関として提供できる機能的な側面です。
2.知覚品質とは
診察や治療、受付や会計など、その病院での体験を通じて患者さん側が知覚する質であり情緒的な側面です。
これらが総合的に「患者満足」となって表れます。
価値という視点から考えれば、機能品質を「提供価値」、知覚品質を「情緒価値」と言い換えることができます。
企業が提供する商品やサービスから、私たちが直接的に受け取る価値が「提供価値」で、その商品やサービスを通じた体験から感じる喜びが「情緒価値」ということになります。
医療技術の進歩で「機能品質」には大きな差が出にくくなってきました。
実際には医療機関の機能分化や地域連携により、機能には違いがあります。
しかし、患者さん側からすると、機能の違いや機能品質の違いは病院自体の評価にあまり影響しません。
それは、機能のレベルが、患者さんが評価するレベルをはるかに超えているからです。
一方の「知覚品質」は、病院の評価に大きく影響します。
「あの病院は雰囲気がよい」
「先生がよく話を聞いてくれる」
「スタッフの感じがいい」
これらの患者さんの評価は、高い知覚品質によって形成される印象です。
この知覚品質による評価が、また次も訪れるかを決めます。
また、低い知覚品質は、悪い口コミを生み出します。
それが広がれば、当然地域での評判は下がります。
医療は専門職ゆえの自負が、ともすると患者視点を見失うことがあります。
企業の商品開発においても、同様のことが言えます。
商品開発者は、社内の技術や商品の機能的な側面に目が行きがちです。
生活者や顧客の目線で、改めて自社の技術を見直してみると、これまでとは異なる発想やアイディアが生まれます。
医療機関においても、患者さんの視点で考えると「この病院は何が特徴で、どうなることが地域で喜ばれる医療機関になるのか」がいつもとは違う形で見えてきます。
日々の業務の追われがちですが、ときに患者さんの目線で、
「病院とはどうあるべきか」
「自身の病院が地域で喜ばれるようになるために何が必要か」
といったことを他のスタッフと議論してもいいのではないでしょうか?
そこから、病院の変革ポイントが見えてきます。
5S活動とは、職場環境の向上を目的に、製造業やサービス業などで行われている活動です。
Sは、整理、整頓、清掃、清潔、習慣化の5つの頭文字をとっています。
この活動は医療機関においても重要な活動として注目されています。
5S活動について、一つ一つ確認していきましょう。
5Sを実践することで、様々な効果が表れます。
ここでは、代表的な効果を5つ紹介します。
5Sで最も大事な作業は、最初に行う「整理」といえます。
不必要なものを廃棄することで、思わぬスペースが生まれます。見た目がすっきりし動線も確保できます。
医療機関では、執務室内に意外と多いのが張り紙です。これらも、必要なものと不必要なものを分別し、貼りっぱなしになっていて不要なものは剥がして廃棄しましょう。
院内で共通のルールのもと、日常使いのものがどこにあるかが認識されていれば、仮に緊急な対応やイレギュラーな対応で他部門に行って業務することがあっても安心して業務にあたれます。
部門によって器材の置き場がバラバラだったり、整頓されていない部門があったりすると、それだけでストレスを感じるものです。
事故の多くは、ちょっとした思い込みやうっかりしたミスによって引き起こされるケースが多いと言えます。
ミスを未然に防ぐには、専門的な知識はもちろんのこと、ミスを起こしにくい環境に整えることが大切です。
多職種の連携が多くの医療機関で課題になっています。
院内での5S活動は、多職種のスタッフが全員参加で協力して進めることを勧めます。
活動を通し部門や職種を超えたコミュニケーションが増えることにより、横の繋がりが生まれ、スムーズな多職種の連携が実施されるようになります。
5S活動を行うことにより、院内がスッキリと片付き、見た目が気持ち良くなります。
さらに、患者さまの動線が確保され、転倒等の事故のリスクが低減します。
5S活動を通し、質の高い医療を提供するだけでなく、患者さまにとって快適な場となり満足度も向上します。
ここまで、選ばれる医療機関になるための取組みとして、「知覚品質の向上」と「5S活動」を紹介しました。
これらを具体的に実践し成果を上げている医療機関があります。
岐阜県美濃市の「みの健康管理センター」という健診と人間ドック専門の機関です。
ここでは、センターの独自価値をスタッフが参加するワークショップから明らかにし、受診者の知覚品質の向上に努めています。
受診者満足を高め、受診者増に成功した「みの健康管理センター」
受診者にとって、健診は年に一度受けないといけないもので、煩わしく感じる方が多くいます。
それは、疾患を患って患者として医療機関に出向くときとは明らかに異なる感情です。
みの健康管理センターのスタッフは、その受信者の感情を理解し、その上で自分たちの行動指針などを決めて実践しています。
また、センター内は清掃が行き届き、いつ行っても新築当時の清潔感を保っています。
当然のこととして、良い口コミや評判が広がります。
特に健康診断の評判は、企業内で口コミが広がりやすく、良い評判は受信者を自ずと増やします。
スタッフが中心となり進めたセンターの対応力向上の実践によって、毎年受診者数を伸ばし続けています。
当社では、病院の独自価値を発見し、それを従業員と共有しながら医療機関の価値向上に向けた支援を行っています。
選ばれる病院への実現へ、お気軽ご相談ください。